アフリカ大陸南西部に位置するアンゴラ。2002年まで30年近くにわたって続いた内戦からの復興をめざすこの国に、綿織物の紡績・紡織工場を立ち上げる一大プロジェクトへの参加が、ある商社を通じてピュアテックに持ちかけられた。
用 途 : | 紡績工場用集塵設備 |
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目 的 : | 綿花の紡績にともなう湿度コントロール・集塵 |
使用場所: | アンゴラ |
設備規模: | 約W70m×D約300m×H約4m(工場建屋)※集塵機のファン直径1.6m |
受注金額: | 8億円 |
期 間 : | 2010年~2013年 |
かつて綿花の産地として栄えたアンゴラの、内戦で廃墟となった紡績工場を再生したい――お客様である商社から、まず営業担当者が相談を受けた。紡績工場の集塵に関して、国内で長年にわたる数多くの実績を持つ当社は、過去にもロシアやウクライナの国際協力案件の相談を受けたことがあるものの、いずれも受注には至っていなかった。そのため、営業担当者はこのときも「受注はまずないだろう」と思いつつ、ひとまず要求に応じて設備レイアウトと見積もりを作成した。それから2年ほど過ぎた頃、商社がアンゴラ政府から正式にこの事業を受託したとの連絡が入る。予想外の展開。うれしさと戸惑いの中、商社の担当者と営業担当者、そして藤田が現地調査へ向かうことになった。藤田は、内戦の生々しい爪痕が残る朽ち果てた建物の状態確認と測定を1週間がかりで行い、可能な限りの情報を集めて帰国した。
紡績は、大量の綿花を集めた塊をほぐしてシート状にし、櫛で梳いて繊維の束にする工程を何度か繰り返した後、撚り合わせて糸にする。当社の設備の役割は、各工程で発生する塵を集めること。また、湿度が高すぎると糸を撚りづらく、低すぎれば切れてしまうため、適度に水分を噴霧して工程ごとの要求湿度を保つことである。これらの技術に関しては、充分な経験とノウハウが当社にはあった。この案件の本当の難しさは、“建物の再利用”という点。「新築とは違い、柱や壁がある状態で、直径1.6mの送風用ファンやそれを取り囲む風洞を含む大型の設備を分割し、建物の中に運び入れる必要がありました。また、床下の空気の通り道についても、既存設備を最大限利用した検討をしなければなりませんでした」。建物のリフォーム設計を行う建築コンサルタントと施工方法に関する打合せを重ね、顔なじみだった紡績会社のOBにも助言を受けながら、藤田は設計を進めていった。
国内での設計と部品製作、仮組によるテストを終えると、藤田は据付に立ち会うため再び現地へ飛んだ。「ところが、取り除くはずの柱が残っていたり、あるはずの壁がなかったり。ハプニングが次々起こり、そのたびに臨機応変な判断が求められました」。それでも、現地での中国人作業員への実演指導を快く引き受けてくれた日本の施工業者の協力もあり、据付はどうにか順調に完了。設備は無事に立ち上がった。「大企業ではないこの会社で、この規模の国際協力案件に関われたのは、お客様や協力業者さんなど、周囲の人の力があってこそです。繊維産業は、日本から労働単価の低いアジアやバングラデシュへと移り、次の中心地と期待されているのがアフリカ。そんな世界的な動きに関われたことに、大きな意義を感じています」。現在、同じアンゴラで、続く第2・第3のプロジェクトが、彼の後進たちによって進行している。